飲食店で独立・開業する2つの方法
飲食店で独立・開業をするには、「ゼロから自分のお店を開く」「フランチャイズに加盟する」という2つの方法があります。
それぞれどのような特徴があるのかを、まずは確認していきましょう。
ゼロから自分のお店を開く
飲食店で独立・開業をする場合、ゼロから自分のお店を開くという方法があります。
これまで料理人として経験を積んできたのであれば、コンセプトやメニュー、お店のインテリアなどすべて自分で決められる、ゼロからのお店づくりをしたいという人も多いでしょう。
ただし、入念な開業準備や、開業してからの経営や事務作業もすべて自分で行う必要があります。料理人としてだけでなく、お金の管理や集客方法など、経営者として多くのことを学び、実践していかなければなりません。
フランチャイズに加盟する
飲食店で独立する際、フランチャイズに加盟するという方法もあります。
フランチャイズ本社と契約をすることで、加盟金やロイヤリティを支払う必要がありますが飲食店運営のノウハウを提供してもらったり、本社からの支援を得られたりする恩恵は大きいでしょう。
経営責任はオーナー自身にあるため自分のお店として運営しながらも、サポートがあるので初めての経営でもお店を始めやすいといえます。ただし、自由度が高くないため自分の思い描く飲食店を、そのまま実現できるというわけではありません。
ゼロから自分のお店を開くメリット
ゼロから自分のお店を開くメリットには、主に以下の2点があげられます。
- 自由にお店づくりができる
- 利益率が高い
フランチャイズ店であれば、コンセプトや運営のルールがすでに決まっており、経営者であっても考えたことを好きなように経営に反映することができません。しかし、ゼロから自分のお店を開けば、お皿の色やインテリアの配置など小さなことから、メニューや経営方針まですべてを自分の考えで決定できます。
また、自分のお店であれば、フランチャイズ店には必要な加盟金やロイヤリティなどの支払いがないため、結果的に利益率が高くなるのも大きなメリットです。
ゼロから自分のお店を開くデメリット
ゼロから自分のお店を開くメリットも大きいですが、反対にデメリットももちろんあります。
- 仕入れルートの確保や事務作業の負担が大きい
- 経営や集客の知識がないと辛いことも
フランチャイズ店であれば、すでに仕入先が決まっていることがほとんどですが、ゼロから自分のお店を開く場合は仕入れルートの確保に苦労することがあります。飲食店勤務の経験があればこれまでお世話になった仕入れ先と、自分のお店をオープンしてからも取引を続けるのも一つの手です。
また、売上管理・利益率の計算・経費管理などの事務作業もすべて自分で行う必要があり、大きな負担になることが考えられます。開業準備を始めるよりも先に、事務作業が一通りできるようになっておくと困ることも少ないでしょう。
そして、自分でお店を開く大きなデメリットに、お客様の認知度をイチから高めていく必要があるということがあげられます。適切な集客ができなければ、どれだけおいしい料理を作ることができても、お客様がお店の存在を知らないと渾身の料理を提供することもできません。
集客は経営にも大きく関わってくることのため、知名度のあるフランチャイズ店よりも集客の難易度が何倍も高いことがデメリットだといえます。
フランチャイズで飲食店を開くメリット
フランチャイズで飲食店を開くメリットは、主に以下の2点があげられます。
- 既存のブランド力や仕入れルートを活用できる
- ノウハウ・資金の両面でサポートを受けられる
フランチャイズ店であれば、知名度がもともと高いため、ゼロからお店を開くよりも集客に困ることが少ないと考えられます。建物が立ち、看板があがるだけで多くのお客様が来店してくれるでしょう。仕入れルートもすでに確保されているので、仕入先を探す手間も省けます。
また、経営のノウハウを本社から指導してもらうことができるため、より店舗経営が成功しやすい環境を整えられるのも大きなメリットです。
ゼロからお店を経営するとなると、手探りの状態でお店を運営していく必要がありますが、フランチャイズ店であれば膨大なデータから算出した成功ルートがすでにわかっている状態なので、致命的な失敗も回避しやすいでしょう。
フランチャイズで飲食店を開くデメリット
経営がしやすいというメリットのあるフランチャイズですが、フランチャイズだからこそのデメリットもあります。
- 自分のお店よりも自由度が低い
- 他店舗の不祥事でブランドイメージが悪くなることも
お店を開業したからには、メニューや経営の仕方も自分の個性を出したいと思うこともあるでしょう。しかし、決められたルールと違うことをするには本社への確認が必須で、ブランドイメージとマッチしないと判断されると実施することもできません。
マニュアルや運営の仕方がすでに決まっている方がやりやすい経営者にとっては、飲食店経営もスムーズに進めやすいと感じるでしょう。
しかし、自分が培ってきた経験を自分のお店でも活かしたいと考えても、実行に移すのが難しい、または実行できたとしてもすぐには行動に移せないというもどかしさがあります。
また、ブランドの認知度が高いがゆえに他のフランチャイズ店舗で不祥事があれば、自店のイメージも悪くなりやすく客足が遠のく可能性があります。
食中毒や衛生管理、来店客による迷惑行為でもブランドイメージを損ねる恐れがあり、本社から徹底した指導があったり気をつけていたりしても、防げない被害があることは心得ておかなければいけません。
飲食店で独立・開業するために必要な資金
飲食店を開業するために必要な資金は、約1,000万円です。
この金額は、物件取得費や工事費だけではなく、売上が数ヶ月なかった場合の生活費や運転資金も含まれます。
店舗の広さ、コンセプト、家族の有無でも初期費用は変わるため、目安として考えておきましょう。
また、この費用はすべて自己資金で用意しなければいけないわけではありません。飲食店勤務の経験や事業計画にもよりますが、600~900万円程度は金融機関による融資を利用するのが一般的です。そのため、100~400万円程度を自己資金で用意しておけば良いということです。
では、具体的にどのような費用がかかり、どのくらいの金額が必要なのか確認していきましょう。
物件の取得費
物件の取得費とは、飲食店用の物件を契約するときに必要な費用です。家賃の10倍くらいの費用がかかると考えておくと良いでしょう。
家賃が30万円であれば、敷金・礼金・保証金(家賃の3~10ヶ月分)・仲介手数料・前家賃など、あわせて約300万円かかります。なお、保証金は物件を解約する際に約8割の金額が返却されることが一般的です。
物件の工事費
物件の内装・外装の工事や、調理に必要な厨房設備の工事に50万円前後は必要です。
厨房設備や内装が残っている「居抜き物件」の場合は、工事費はそこまで必要ありませんが、造作譲渡料がかかる場合がほとんどです。
設備や什器の費用
ガステーブルやオーブン、冷蔵庫など調理に必要な設備から、テーブル・イス・食器などの什器をそろえなければいけません。
設備には最低でも100万円、什器は席数にもよりますが30~40万円は必要でしょう。
開業前人件費
開業前に、スタッフの採用やトレーニングが必要です。
時給1,000円のアルバイト3人を採用した場合、1日5時間、週5日を2週間行ったとすると、15万円の開業前人件費がかかります。
開業前宣伝費
オープンと同時にお客様にきてもらいたい場合は、お店のオープン前から宣伝しておきましょう。
ダイレクトメールやチラシのポスティング、グルメサイトへの掲載、ホームページ作成などを合わせると40~50万円以上かかります。
宣伝費を抑えたい場合は、Instagramをホームページのように利用したり、TikTokで動画作成をして宣伝するのでも良さそうです。
運転資金(できれば半年分)
オープンして数ヶ月間は、安定してお客様が来店してくれるとは限りません。
最低3ヶ月分、できれば半年分くらい売上がなくても営業できるように、150~300万円程度の運転資金は確保しておきましょう。
生活費(できれば1年分)
飲食店の運転資金だけではなく、生活費の確保も重要です。
お店をオープンしてすぐは、生活費を捻出できるほどの売上がない可能性も考えられます。
お店が赤字の場合、他にアルバイトなどをして生活費を作る方法もありますが、お店の経営
に集中できないため得策とはいえないでしょう。
生活に必要な費用を正確に算出し、最低でも半年分できれば1年分の生活費を開業資金に含めておくことが大切です。2人暮らしで、毎月余裕をもって20万円かかるとすると1年間で240万円は必要です。さらに、子供がいるとしたら教育費なども入れて考えて計算しなければいけません。
飲食店で独立・開業するまでの流れ
ここからは、お店の開業までの流れを確認していきましょう。
お店の開業準備は、オープンの12ヶ月前までには始めておくことが重要です。
飲食店の廃業率は、開業から3年で70%以上といわれています。お店をできるだけ長く存続させるには、入念に開業準備ができるかにかかっています。飲食店の開業にはさまざまな準備が必要ですが、入念に進めていきましょう。
STEP1.お店のコンセプトやターゲット層を考える
お店の開業準備は、まずお店のコンセプトやターゲット層を考えることから始めましょう。
お店のコンセプトやターゲット層によって、業種や業態、立地、メニュー内容や価格が大きく変わってくるからです。
大まかに決めておくだけでは、内装デザインやメニューや価格決定にブレが生じてしまうため、最初の段階から詳細に決定しておくことが大切です。
STEP2.立地を考える
飲食店の成功の鍵は、立地にあるといっても過言ではありません。
繁華街、住宅街、ビジネス街、駅近など、集客できるコンセプトに合った立地を選ぶことがポイントです。
また、イメージだけで選ぶのではなく、すでに付近で出店しているお店やターゲットの詳細な調査をして決定する必要があります。例えば、ビジネス街で会社員をターゲットにしたランチ時間の来店を見込んでお店を構えても、お弁当を持参している会社員が多い・激戦区でありお客様の確保が難しいという実態があれば出店地として適切ではないといえます。
STEP3.事業計画を立てる
コンセプトや立地が決まったら、事業計画を立てましょう。あわせて事業計画書を作成しておくと良さそうです。
事業計画書は、金融機関から融資を受ける際に提出しなければいけないものであり、事業計画の進捗を確認するときにも活用できます。
STEP4.物件探し
物件探しは、資金調達の前に済ませておくことが重要です。ここまでの準備はオープンから6ヶ月までには終わらせておきましょう。
どのような店をどこに出店するかが決まっていれば、資金調達をする際により具体的な事業計画として提示でき、資金調達がしやすくなるからです。
また、物件探しには施工業者にも同席してもらうと良いでしょう。店舗をイメージ通りにできるかその場で判断してくれるため、スムーズに進められます。
STEP5.資金調達・物件取得
開業資金は約1,000万円かかります。100~400万程度は自己資金でまかなう必要があるため、その分は事前に用意しておくことが大切です。
残りの600~900万円は、融資を受けて調達できるようにしましょう。そして、事前に探しておいた物件の取得を済ませましょう。
STEP6.店舗工事
店舗工事は、お店のコンセプトやターゲット層に合わせるために重要な準備です。
オープンまでに余裕を持って完成できるように、3~5ヶ月前には着手できるようにスケジューリングしておくことが大切です。
STEP7.スタッフの採用・教育
スタッフの採用活動は、オープンの3ヶ月前にはスタートできるようにしましょう。
良い人材を確保するには、予想以上に時間がかかります。
また、オープンまでにある程度トレーニングを行ってからオープンできるように準備しておくと、スムーズに営業ができるはずです。
STEP8.宣伝活動
お店のオープンの準備を早めに整えて、ダイレクトメールやチラシのポスティングをしてお店周辺のお客様になりうる方に向けて宣伝活動を行いましょう。
また、お店の準備段階をSNSで発信しておくと、お店のファンになったSNSユーザーが遠くから足を運んでくれることがあるかもしれません。
STEP9.いよいよオープン!
準備を完了させたらいよいよオープンです。
オープンしてからは、予想もしていなかったアクシデントや課題が見つかることもあります。
それらを糧にして、お店づくりに反映していくことでより良いお店へとブラッシュアップしていきましょう。
飲食店の独立・開業では準備が大切!データに基づく立地選びと余裕のある資金計画で、まずは3年生き残ることを目指そう
飲食店の独立・開業をする人は多いですが、3年以内には半分以上の人が廃業してしまうともいわれるほど難しいです。
特に、ゼロから自分のお店を開業するとなるとやり直しがききにくく、方針の小さなミスが大きな失敗に繋がり、数年でお店をたたんでしまうことになりかねません。
飲食店の独立・開業を成功できるかは、準備段階にかかっています。自己資金と融資をあわせて1,000万円前後は用意しましょう。そして、綿密なコンセプト設計と、立地選びを怠らず着実に開業準備を進めていくことが大切です。
ライバルの多い飲食業界ですが、まずは3年生き残ることを目指しましょう。