飲食店の仕入れの中でも難しいのが野菜です。野菜の流通は気候や天候に大きく左右され、産地や育て方によって味も変わります。本記事では野菜はどこから仕入れればいいのか、野菜に込められたこだわりをメニュー開発にどう活かせばいいのかを解説します。
飲食店開業前に押さえておきたい、野菜の基礎知識
最近はオーガニックが注目され、ヘルシー・健康志向の人も増えています。このような層を狙い、無農薬野菜を使ったメニュー開発、旬の野菜を取り入れた限定メニューを作る飲食店も増えました。
野菜の旬について知っておくことは、メニュー開発のためにもコストカットのためにも、飲食店の経営者にとって大切なことです。
メニュー開発には”旬”を取り入れたい
野菜には”旬”があります。旬の野菜はおいしいだけでなく、日持ちしやすく、価格も安くなります。旬野菜をうまく使えることは、ベテランの飲食店経営者になるための第一歩かもしれません。
次のカレンダーを参考に、野菜の仕入れやメニュー開発に旬を取り入れてみましょう。
季節ごとの値動き
野菜の価格は旬と天候の影響を大きく受けます。まずは、農林水産省が公表した「平成24~26年のキャベツの値動き」のグラフを見てみましょう。
旬野菜は流通が増え、価格が低くなる傾向があるものの、その限りではありません。たとえばこのグラフでも、気候や天候の影響で卸売価格が変動しています。
「旬野菜は安い」という傾向はありますが、生鮮食品である以上、一定の値動きをするわけではありません。野菜の仕入れ値を抑えたり、旬を活かしたメニューを開発したりするなら、その年・その季節のニュースと実際の価格を見ながら仕入れを考えましょう。
野菜の仕入先はどう選ぶ?頼れるパートナーの見極め方
野菜の仕入れ値を抑えるためにも、魅力的なメニュー開発をするためにも、野菜の旬や値動きを把握することは大切です。
しかし、飲食店の運営は楽ではありません。野菜以外にも仕入れなければならない食材はたくさんありますし、事務作業や仕込みなどもあります。野菜の価格や旬、流通状況にばかり目を向けているわけにはいかないのです。
そこで大切なのが、「野菜について深く理解し、その時々でベストな提案をしてくれるパートナー」を見つけることです。
野菜卸は”提案力”で選ぶ
野菜卸は価格や配送に関して、どのくらい融通が利くかで選ぶ人が多いでしょう。たしかに、これらは重要ですが、もうひとつ大切なのが「提案力」です。
野菜の旬やその年の流通事情、世の中のトレンドを把握し、それを踏まえて「今はこの野菜がいいですよ」「こんなメニューはどうですか?」と提案してくれるような卸業者を選びましょう。
最近では「インスタ栄えするかどうか」でお店を選ぶ消費者も増えているので、野菜の見た目も重要です。野菜の写真をカタログとしてまとめ、それを見せながら提案してくれる卸業者・営業担当がいると頼もしいでしょう。
農家は”こだわり”で選ぶ
オーガニックメニューを売りにしたお店づくりをするなら、野菜は農家から直接仕入れるのがおすすめです。生産者の顔が見えることは、それを仕入れるお店にとってはもちろん、料理を食べるお客さんの安心にもつながります。
農家から直接仕入れるなら、その農家の「こだわり」で仕入れ先を選びましょう。同じ無農薬野菜でも、生産者一人ひとりにこだわりがあります。料理に使われている野菜はどんな風に育てられたのか、どんなこだわりがあるのかといった情報は、そのメニューのセールスポイントにもなります。
仕入れ先は複数確保しておく
野菜にこだわるなら、できれば農家から直接仕入れたいです。しかし、野菜は天候や気候の影響を受けやすく、生産が安定しないときもあります。仕入れ先がひとつだけだと、不作のときに食材不足になってしまいます。
だからこそ、野菜の仕入れ先は複数確保しておきましょう。特にこだわりたい野菜は農家から直接仕入れ、ほかは信頼できる野菜卸から仕入れる。お店の近くにある業務用スーパーや直売所を把握しておき、いざというときは買出しにいけるようにしておくことも大切です。
【品目が豊富】野菜を直接仕入れられる農家・農園3選
野菜中心のメニュー開発を進めるときにおすすめな、こだわり抜いて育てられた野菜を産地直送で手に入れられる農園を3つ紹介します。
木下農園グループ
- 1年間を通して旬の野菜が手に入る
- 瀬戸内海の恵まれた自然で育った野菜の数々
- 生産品目が多く、いろいろな野菜を使いたいお店におすすめ
木下農園グループは、香川県坂出市を基盤に農業を営んでいます。「グループ」の名前の通り、遊休農地(現在使われておらず、将来的に使われる可能性も低い農地)を含む何百もの農地を、近隣の農家から借りて農作に取り組んでいます。
恵まれた瀬戸内海の自然の中で育った野菜を、大きなグループから安定して仕入れられることは、飲食店にとって魅力的です。
主な生産野菜
- レタス
- キャベツ
- ブロッコリー
- 青ネギ
- 枝豆
- 金時人参
- さつまいも
- 大根
- ミニトマト
- スイートコーン
- ししとう
- かんきつ類
小野農園
- ITやデータを駆使した安定生産
- ASIAGAPを遵守した安心の野菜
- ハウスを使わない露地野菜
小野農園は、ITを駆使して野菜を安定生産している農園です。過去の気象データや作業データを活用し、作物が安定して育つように調整することで、安定した生産を実現しています。従来は安定的な生産が難しかった、ハウスを使わない「露地野菜」の野菜を、安心して仕入れられるでしょう。
自然に近い状態で栽培する露地野菜は、野菜それぞれが本来育つ時期に育った、旬の味わいが楽しめるものです。
主な生産野菜
- ネギ
- ブロッコリー
- スイートコーン
- レタス
- 玉ねぎ
寺坂農園
- 北海道の富良野市から、旬の野菜を直送
- 甘みを感じるほどに、ぎゅっと詰まった栄養
- 自信があるから、おいしくなければ返金保証
冷涼な北海道はそもそもの農薬使用量が少なく。ほかの都府県の3分の1ほどといわれています。寺坂農園は、そんな北海道富良野市にある農園で、どの野菜も農薬を最低限に抑えて育てています。
「おいしくなければ返金保証」「生産者として納得できないものは発送ストップ」など、こだわりと自信が見て取れる運営が特徴です。とことんこだわって作りたい限定メニューがあるお店には、ピッタリの農園でしょう。
主な生産野菜
- 富良野カボチャ
- 富良野じゃがいも
- 富良野にんじん
- 富良野たまねぎ
- 越冬じゃがいも
- 越冬にんじん
- 越冬たまねぎ
- 雪下キャベツ
- りんご
【トマト】野菜を直接仕入れられる農家・農園2選
生産者が手塩にかけて育てたトマトを産地直送で手に入れられる農園を2つ紹介します。
千鳥農園
- 昔ながらの方法で育てた男気トマト
- 日本一美味しいトマトを作るために生まれた農園
- テレビや新聞など、メディアでの取り上げ多数
千鳥農園は「日本一美味しいトマトを作りたい」という熱い想いから生まれた農園です。無かん水、低農薬、有機肥料のみで栽培したトマトは、素材本来の味わいが楽しめます。メディアでの取り上げ実績も多く、話題づくりにも最適です。
井出トマト農園
- 完熟してから収穫することで生まれる、極上の甘み
- おいしい品種を求め、オランダにまで出かけるこだわり
- 生産からパッケージまで一貫生産
井出トマト農園では、「トマトは私たちの人生です」とまで語るスタッフたちが、手塩にかけてトマト作りをしています。おいしい品種を見つけるためにオランダまで出向き、収穫は完熟を待ってから。生産はもちろん、選別やパッケージまで一貫して行うこだわりようです。
【キャベツ】野菜を直接仕入れられる農家・農園2選
生産者が手塩にかけて育てたキャベツを産地直送で手に入れられる農園を2つ紹介します。
ながとも農園
- 何十年も続く、手作業での収穫
- 料理に染み出すほどの濃い甘み
- 熟練の生産者だからこそ言える「こだわりは特にない」の一言
ながとも農園は80歳を超えるお父さんを中心に、キャベツを作り続けてきた農園です。キャベツをひと玉ずつ、包丁を使って収穫していくスタイルは、栽培を始めた頃から一貫しています。「こだわりは特にない。あえて言うならなるべく自然に」という一言からは、熟練の生産者の自信が感じられます。
志賀農園
- 熊本県認定のエコファーマー
- 熊本の高冷地で育った、味の濃いキャベツ
- 自家製の堆肥を使った、自然由来の味わい
志賀農園は、熊本県が定めた「持続性の高い農業生産方式の導入に関する計画」を作成し、知事から認定を受けたエコファーマーです。標高680mの高冷地で、自家製の堆肥と真心を込めて育てられるキャベツは味が濃く、1年の中でも特に冬に甘みが増します。
【茄子】野菜を直接仕入れられる農家・農園2選
生産者が手塩にかけて育てた茄子を産地直送で手に入れられる農園を2つ紹介します。
川崎農園
- 全国的に有名な泉州水茄子を作る農園
- 安政7年から受け継ぎ続けてきた思いと情熱
- 150年を超え、代々培養してきた微生物で土作り
川崎農園は、全国的にも有名な「泉州水茄子」を、安政7年から作り続けてきた農園です。おいしい野菜は土から生まれるもので、川崎農園では150年以上にわたり、代々微生物を培養して土作りをしてきました。水茄子の料理を出したいお店には、特におすすめです。
佐藤大農園
- 独自のブランド茄子「りんごあめ」
- りんご飴のような形のかわいらしい茄子
- 良いものだけを提供するために、規格と等級をあえて廃止
佐藤大農園は、独自のブランド茄子「りんごあめ」を育てる農園です。りんご飴のような形の可愛らしい茄子にはうまみがぎゅっと詰まっています。味よし見た目よしの茄子はどれも高品質で、そのままでも料理しても、自信をもってお客さんに提供できます。
【じゃがいも】野菜を直接仕入れられる農家・農園2選
生産者が手塩にかけて育てたじゃがいもを産地直送で手に入れられる農園を2つ紹介します。
村上農場
- 完熟、貯蔵、熟成を経て仕上がる味わい
- 品種とその年の気候に合わせ、丁寧に熟成させる
- 農園Webサイトに「村上農場の野菜が味わえるお店」を掲載
村上農場は北海道十勝にある農園で、じゃがいもや人参、にんにくを育てています。特にじゃがいもにこだわりがあり、完熟したものを収穫した後、貯蔵・熟成を経て味わいを仕上げていきます。熟成庫熟成や雪下熟成、長期熟成など、熟成方法にまでこだわり抜いているのも魅力です。
松本農場
- 北海道美瑛町から産地直送
- 一つひとつ手作業で収穫
- さまざまな品種のじゃがいもを生産
松本農場は北海道美瑛町で育てたじゃがいもを、産地直送で販売しています。11品種のじゃがいもはすべて手作業で収穫されています。品種にまでこだわり、新しいメニューを研究・開発したいお店におすすめです。
【きゅうり】野菜を直接仕入れられる農家・農園2選
生産者が手塩にかけて育てたきゅうりを産地直送で手に入れられる農園を2つ紹介します。
ちちぶ丸山農園
- 1940年代に生まれた埼玉県産ブランド「秩父きゅうり」を生産
- 高級きゅうりとして、都内料亭や有名百貨店で人気
- 埼玉県のGAP認証「S-GAP2020」を取得
ちちぶ丸山農園は、埼玉県から認証を受けたエコファームです。有機肥料を使って栄養補充・土壌改良された土で、ブランドきゅうり「秩父きゅうり」を育てています。このきゅうりを使用した保存料・合成着色料不使用の「秩父ピクルス」も人気です。
ゆたか農園
- 味はもちろん、見た目も一味違う
- 独自ブランド「magiQ(マジきゅう)」
- きゅうり一筋20年で辿り着いた理想のきゅうり
ゆたか農園はきゅうり一筋20年、こだわり続けることで辿り着いた理想のきゅうり「majiQ(マジきゅう)」を作っています。majiQの”マジ”は、「本気(マジ)で育てている、魔法(マジック)をかけたようにおいしくなったという事実を込めた名前です。味や見た目はもちろん、ストーリー性も高く、集客の強い味方になってくれるでしょう。
【レタス】野菜を直接仕入れられる農家・農園2選
生産者が手塩にかけて育てたレタスを産地直送で手に入れられる農園を2つ紹介します。
曽爾村やさい屋本舗企業組合
- 飲食店への食材提供を専門とする事業者
- 奈良県曽爾村の豊かな自然の中で育てられた旬野菜
- 野菜それぞれの特徴を最大限に活かした野菜・加工品作り
曽爾村やさい屋本舗企業組合は、自然豊かな曽爾村だからこそできる野菜を、飲食店専門で提供しています。野菜の特徴を最大限に活かすこと、季節感を感じる食材を届けることをポリシーに、商品開発と販売を続けてきました。「村の活性化に貢献する」という理念があり、メニュー開発にストーリー性をもたせたいお店にもピッタリです。
どんぐり農園
- 日本有数の規模と歴史を誇るレタス産地、静岡県吉田町から直送
- 暖かく日照時間の長い恵まれた条件から生まれるしゃきしゃきレタス
- 土作りから収穫まで、綿密な計画と管理から生まれる品質
どんぐり農園は、昭和30年ごろから続くレタス産地「静岡県吉田町」にある農園です。吉田町は知名度こそ高くないものの、日本有数の規模と歴史を誇る産地です。恵まれた気候から生まれる、しゃきしゃきとした食感の冬レタスはサラダにピッタリです。
こだわり野菜を仕入れて、メニュー開発や集客に活かそう
野菜は天候や気候、土壌などに大きく左右される食材です。同じ種類の野菜でも、どこでどのように育てられたかにより、味も見た目も変わってきます。
本記事で紹介したようなこだわり抜いて作られた野菜は、味や見た目はもちろん、ストーリー性も抜群です。こだわり野菜を使ったおいしいメニューを開発するだけでなく、どこで、どんな人たちが育てているのかをアピールすることは集客にも有効でしょう。
記事で紹介した農園の中で気になるところがあったら、まずは公式サイトから問い合わせをしてみてください。