居酒屋を開く前に知っておきたい、日本酒の区分
日本酒は、大きく「特定名称酒」と「普通酒」の2種類に分けられます。
まずは、それぞれの違いについて理解を深めていきましょう。
特定名称酒
特定名称酒にはいくつかの種類があり、原料や精米歩合などの条件を満たした日本酒のことを指します。
| 特定名称酒 | 名称 | 原料 | 精米歩合 |
| 吟醸造 | 吟醸酒 | 米・米麹・醸造アルコール | 60％以下 |
| 大吟醸酒 | 米・米麹・醸造アルコール | 50％以下 | |
| 純米酒 | 純米酒 | 米・米麹 | 指定なし |
| 純米吟醸酒 | 米・米麹 | 60％以下 | |
| 純米大吟醸酒 | 米・米麹 | 50％以下 | |
| 特別純米酒 | 米・米麹 | 60％以下または特別な醸造方法 | |
| 本醸造酒 | 本醸造酒 | 米・米麹・醸造アルコール | 70％以下 |
| 特別本醸造酒 | 米・米麹・醸造アルコール | 60％以下または特別な醸造方法 |
指定名称酒は、それぞれ固有の香りや色沢があるのが特徴です。
日本酒のラベルに「吟醸」「本醸造」「純米」などの記載があるものが特定名称酒で、簡単に見分けることができます。
普通酒
普通酒は、特定名称酒の条件に該当しない、醸造アルコールが添加されている日本酒です。くせが少なく、飲みやすいのが特徴です。
日本酒のラベルに「吟醸」「本醸造」「純米」などの記載がないものが普通酒にあたります。
居酒屋は日本酒をどう選ぶ？
居酒屋であれば、日本酒もこだわって選びたいもの。日本酒の選び方を4パターン紹介します。
区分・種類で選ぶ
先述したように、日本酒には「吟醸」「本醸造」「純米」などの特定名称酒と、それらに該当しない普通酒があります。
吟醸酒はフルーティですっきりとした飲み口、純米酒は味わい深くふくよかな香り、本醸造酒は主張の少ないシンプルな味わいなど、区分や種類をみて選ぶ方法です。
醸造元で選ぶ
全国には日本酒の名所がいくつかあり、醸造元で選ぶのも良いでしょう。
たとえば新潟をテーマにしたお店であれば、新潟の酒造の日本酒を仕入れてストーリー性をもたせるとそれがお店のコンセプトにもなります。
香りで選ぶ
香りは、日本酒の作り方や使われている米、酵母によって違いが出てきます。
作り方についての香りは「区分・種類で選ぶ」でお伝えした通りで、使われている酵母によってリンゴ系、バナナ系の香りなどフルーティさにも違いがあります。
主力メニューに合わせて選ぶ
日本酒は、料理との相性を考えながら選ぶことも大切です。
同じ日本酒といっても、香りや味わいによっては「生ものとは合わない」「油の多い料理には向いていない」などがあります。
どんな日本酒にどんな料理が合う？居酒屋のコンセプトに合ったお酒選び
ひとくちに「日本酒」といっても、香りや味わいは千差万別。
提供している料理にマッチさせたり、居酒屋のコンセプトに合った日本酒を選びましょう。
日本酒は味や香りで4タイプに分けられる
日本酒は「爽酒」「薫酒」「醇酒」「熟酒」という4つのタイプに分けられます。この分類は、どんな味わいや香りのお酒なのか、どんな飲み方がおすすめかを知るためのものです。
「唎酒師（ききさけし）」の資格を管理する「日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会（SSI）」によって提案されたもので、さまざまな居酒屋でも日本酒を提供するときに参考にされています。
メニューの幅が広い居酒屋なら「爽酒」
穏やかな香りで口当たりがすっきりとしている爽酒は、薄めの味付けの料理や魚介類との相性が抜群です。生酒や本醸造酒、純米酒に多くみられます。
比較的幅広い料理と合わせられるため、種類も多めに置いておくと良いかもしれません。
例：魚の塩焼き、出汁巻き卵、ポテトサラダ、シュウマイ、生春巻き
食前酒・淡白な料理におすすめの「薫酒」
薫酒は果実やお花のようなフルーティな香りが特徴で、吟醸酒・大吟醸酒に多くみられます。
食前酒としても提供でき、どちらかというと淡白で素材が生かされた料理との相性が良いです。
例：鮎の塩焼き・刺し身・帆立貝のワイン蒸し・棒々鶏・八宝菜
食中酒におすすめの「醇酒」
ふくよかな香りとコクのある味わいを持つ醇酒は、4つのタイプのなかでも食中酒に適した日本酒です。純米酒に多くみられ、しっかりとした味付けの料理とよく合います。
例：焼き鳥・とんかつ・すき焼き・ハンバーグ・ステーキ・麻婆豆腐
味が濃い料理によく合う「熟酒」
熟酒は、とろりとした甘みや干した果物やナッツなどの深くスパイシーな香りが特徴です。力強く豊醇な味わいのため、濃い味付けや油の多い料理との相性が良いです。
例：うなぎの蒲焼・豚の角煮・ビーフシチュー・鴨のロースト・北京ダック
居酒屋は日本酒をどこから仕入れる？
「日本酒を仕入れるには、どうすれば？」と迷ってしまうこともあるでしょう。
仕入先を3種類ご紹介します。
酒屋
お店に近い酒屋さんであれば利便性も高く酒造や卸売業者からお酒を仕入れているため、さまざまな日本酒を仕入れることができるでしょう。
酒屋によっては、特約店として酒蔵と直接取り引きをしていて珍しい日本酒を置いている可能性も十分にあります。ただし、仕入れ先がかたよっていないか、求める日本酒をあつかっているかなどをよく確認するようにしましょう。
卸売業者
日本酒に強い卸売業者であれば、全国の日本酒を1箇所で仕入れることができ大変便利です。
業者によっては、1本からでも仕入れられたり毎日配送してくれるサービスがあります。また、「こんな日本酒がほしい」と相談すれば、おすすめを紹介してくれることもあるでしょう。
酒造・酒蔵
酒造（酒蔵）によっては、直接仕入れることもできますが、予定の仕入れの量などもふまえて酒造と良く相談することが重要です。
お店で取り扱うすべての日本酒を酒造から仕入れるのあまり現実的ではないでしょう。こだわりのある特定の日本酒は可能であれば直接仕入れる、それ以外は卸売業者から仕入れるなど、工夫をしながら仕入れると良いでしょう。
居酒屋におすすめの日本酒の酒蔵9選
居酒屋におすすめの日本酒の酒蔵を9つ紹介します。
日本酒の名所、新潟の酒造から、岐阜や高知などさまざまな地域の日本酒を厳選しています。
WAKAZE -フランスで進化する日本酒「THE CLASSIC」-
フランスのエスプリと日本の伝統文化の融合で生まれたWAKAZEシリーズ
・日本の伝統とフランス文化の融合「THE CLASSIC」
・心地よい柚子の香りのフランスSAKE「YUZU SAKE」
・ミルキーで甘いアロマ感じるフランスSAKE「NIGORI SAKE」
「日本酒を世界酒に」をビジョンに2016年に山形県で創業されたWAKAZEは、パリで設計された新しい日本酒を提供しています。
ほとんどお米を磨かず、骨格のある味わいを引き出し、米糠の廃棄を最小限に抑えるという、江戸時代の技法で産地のお米と水を使う「MADE IN LOCAL」の思想を大切にした酒つくりをされています。
また、添加物を一切加えず、手間暇かけた丁寧なつくりをされているのも魅力です。
その生い立ちから、洋風料理に最適なのはもちろん、お店の料理と共に魅力ある新しいお酒の提供をされてはいかがでしょうか。
白瀧酒造株式会社 -雪国越後湯沢の水、真摯な酒造り-
- 雪どけ水のようにかろやかで、ほんのり甘い「上善如水」
- 酒米の旨みと、厚みのある奥深いの「湊屋藤助 純米大吟醸」
- 冷酒からお燗まで楽しめる万能型「魚沼」
新潟県南魚沼にある「白瀧酒造株式会社」は、160年の酒造りの歴史を持ちます。
たっぷりと降り積もった雪からできる清冽な地下水が、すべてのお酒造りに使われており白瀧酒造の酒質を決定づけています。
特におすすめの日本酒は、冷酒からお燗まで楽しめる万能型の「魚沼」です。さらりとした味わいの「淡麗辛口」と、風味豊かな深い味わいの「濃醇」の2種類があり、どちらも魚沼産のお米を100％使用して仕込まれています。
新潟の豊かで清らかな自然を感じられる逸品で、純米酒のため幅広い料理との相性も良いでしょう。冷酒でもお燗でも楽しめるため、コストパフォーマンスにも優れています。
朝日酒造株式会社 – 久保田を誇る、200年の歴史-
- シャープなキレ味と飲み飽きしない味わいの「久保田」
- 洗練されたふくらみのある味わいの「洗心」
- 軽快な飲み口、柔らかな味わいの「越州」
新潟県長岡市にある「朝日酒造株式会社」は、およそ200年の歴史を持つ老舗酒造です。甘口でコク深い味わいが一般的に定着していた日本酒に、キレのあるさっぱりとした味わいの「淡麗辛口」という新たな方向性を確立しました。
「酒造りは、米づくりから」という思いから「農醸一貫」を実現するために、地域の契約栽培農家と協力しながら、酒造りに最適な米づくりもおこなっています。
朝日酒造には久保田をはじめ、洗心・越州・朝日山・継などのブランドがあり、そのブランドの中にも吟醸・大吟醸・純米大吟醸などいくつかの種類があります。味わいや香り、マッチする料理も変わってくるため、それぞれの特徴を吟味しながら選ぶと良いでしょう。
八海醸造株式会社 -いつまでも飲み飽きない、玉のようにきれいな酒-
- 淡麗ですっきりとした飲み口の普通酒「清酒 八海山」
- 冷でよし、燗でよし。やわらかな口当たりと淡麗な味わいの「特別本醸造 八海山」
- 雪とともに眠り、熟成された優雅な風味を持つ「純米大吟醸 八海山 雪室熟成八年」
新潟県南魚沼にある「八海醸造株式会社」は、食事の邪魔をしない、ふと美味しさに気づくような日本酒造りを大切にしている酒造です。
旨みがあるのに、飲み飽きない。辛口なのに、尖ったところがない。淡麗なのに、深みがある。食事とのマリアージュを重視して日本酒を選びたい場合は、八海醸造の日本酒を検討してみると良いでしょう。
低温貯蔵庫「雪室」で八年間熟成させた「純米大吟醸 八海山 雪室熟成八年」は、なめらかで優雅な風味を持つ熟成酒。淡麗な味わいを残しながらもやさしい口当たりは、少し濃いめの味付けながら繊細な料理との相性が良いでしょう。
旭酒造株式会社 -真の酒は、誰が飲んでも美味しいモノ-
- 二割三分の米磨きは日本最高峰
- 誰が飲んでも美味しさを感じることのできる日本酒「獺祭」
- 二口三口と飲み進めるごとに深い味わいを楽しめる
山口県にある「旭酒造株式会社」は、「酔うため、売るための酒えではなく、味わう酒を求めて。」という思いを大切にしています。
製造している「獺祭」が代表酒であり、その中でも「獺祭 磨き二割三分」は精米歩合が23％と日本最高峰。日本酒が苦手な方でもするりと美味しく飲むことができ、二口三口と進めるごとに深い味わいをさらに感じることができます。
「真に美味しい酒は、誰が飲んでも美味しいモノ」と真に美味しい酒造りを目指す旭酒造の獺祭は、老若男女問わず誰もが楽しめる日本酒といっても言い過ぎることはないでしょう。
日本酒が好きなお客様にも、そうでないお客様にも楽しんでもらえる居酒屋を目指すなら、置いておきたい日本酒です。
高木酒造株式会社 -こだわりの土佐体感地酒-
- ハレの日に楽しむお酒「しずく酒」
- フルティーで幅広い料理と相性の良いワンランク上の食中酒「豊能梅」
- 爽やかな香り土佐酒らしい軽快な辛口「土佐金蔵」
高知県にある「高木酒造株式会社」は、高知の魅力の詰まった土佐体感地酒を造ることにこだわりを持っています。
高知素材の「高知酵母」と「高知県産酒造好適米」を使用し、そのなかでも高知オリジナル酵母を使って日本酒を製造しています。酵母は香りを決定づける役割を持ち、高木酒造はリンゴ、バナナ、パイナップル系の香りがするフルーティさが特徴です。
日本酒初心者の方でも、女性にも日本酒を楽しんでもらいたいという居酒屋であれば、高木酒造の日本酒を取り入れてみましょう。
出羽桜酒造株式会社 -世界が認める日本のSAKE-
- 繊細で優雅な味わいと美しい香りが特徴の「出羽桜 大吟醸酒」
- 淡麗辛口の極み、爽やかさ・喉越し・キレの良さが卓越した超辛口「出羽桜 春雷」
- インターナショナル・ワイン・チャレンジのSAKE部門で最高賞に輝いた「出羽桜 一路」
山形県にある「出羽桜酒造株式会社」はおよそ170年の歴史を持ち、多くの受賞歴のある日本酒を造酒しています。
「吟醸を世界の言葉に」を掲げ、国内外の方々にも楽しんでもらえる日本酒造りを極めているのが特徴です。
「出羽桜 一路」は、毎年ロンドンで開催されるインターナショナル・ワイン・チャレンジのSAKE部門の最高賞を受賞しており、フルーティーな香りとスムーズな飲み口は白ワインを思わせる逸品。
日本酒初心者や女性の方はもちろん、外国人観光客の方をターゲットにしたい居酒屋であれば、仕入れておきたい日本酒のひとつだといえるでしょう。
黒龍酒造株式会社 -かたくななまでに、こだわり続ける-
- ふくよかな果実香と、しっとりとボリュームのある味わい「黒龍 大吟醸 龍」
- 熟成により洗練された深い味わい、ぬる燗〜上燗で楽しめる「九頭⿓ ⼤吟醸」
- 酒米「五百万⽯」の風味を残した燗良し冷やして良しの「九頭龍 純米」
福井県にある「黒龍酒造株式会社」は、霊峰白山山系の雪解け水が長い年月をかけ名水として湧き出ている地にあります。
丹精込めてつくられた酒米・軟らかくしなやかな水・日本らしい洗練されたボトル・こだわり抜いたラベル、日本酒に関わるすべてに、真心と愛情を込めて大切に造られています。
「九頭龍 純米」は、酒米である福井県産五百万⽯の⽶の⾵味を残しつつ飲みやすい日本酒。熟したフルーツのような香りと、旨味・苦味のバランスの良い味わいは、料理を選ばない万能さがあります。燗良し冷やして良し、さまざまな温度で楽しめます。
黒龍酒造｜KOKURYU｜永遠へつながる一献「黒龍」｜自由の扉をあける一杯「九頭龍」
有限会社 渡辺酒造店 -飛騨山脈の伏流水、酒米の飛騨ほまれ-
- やわらかさのなかにある奥深いコク、調和する五味「蓬莱 家伝手造り」
- 辛口のなかにもお米の甘みと旨味のある芳醇な辛口「蔵元の隠し酒 番外品」
- 飛騨の日本酒ファンに愛され続けるベストセラ－「蓬莱 上撰」
「渡辺酒造店」のある岐阜県飛騨市古川町は、全国でも最高レベルの水質環境をもつ北アルプス連峰や飛騨山脈などの山々に囲まれた古川盆地に位置します。
渡辺酒造店は、「米のいのちを生かすよう、真っ直ぐに醸す、心や人間性の酒造り」を追い求め、世界中のコンクールで数々の受賞をしてきました。
予約だけで売り切れてしまう幻の美酒「蔵元の隠し酒 番外品」は新聞紙を一枚巻いた、なんとも珍しい逸品。光を遮断されており、最高の貯蔵管理方法で蔵出しされています。
辛口のなかにもお米の甘みと旨味のある芳醇な辛口、淡麗すぎない芯のある味わい。ただの辛口では物足りない、常連客に提供したい日本酒です。
お店のコンセプトに合った日本酒・酒造を選び、ストーリーのある食事体験を
日本酒は、酒造ごとにさまざまな思いを込められながら、大切に造られています。
こだわりのある居酒屋には、こだわりのある日本酒で彩りを。
ただ、「酒がおいしい」「料理がおいしい」だけではない、ストーリーのある食事体験で「また行きたい」居酒屋にしていきましょう。
