豚肉を仕入れる前に、食肉の基礎知識を身につけよう
飲食店が仕入れる食材の中でも、食肉は難しい食材です。焼き肉屋やステーキ屋など、肉がメインのお店では何をどこから仕入れるかがお店の将来を左右するといっても過言ではありません。
豚肉をはじめとする食肉の仕入れにおいて、最低限必要となる知識を押さえておきましょう。
仕入れの相場や単位
食肉に限らず、食材には仕入れの相場や単位があります。食肉の場合、品種や部位ごとの相場を知らなければ、質の低い肉を高く買ってしまうかもしれません。もちろん、相場は日々変動するため、常にチェックしておきたいです。
食肉の仕入れ単位は「ブロック」であることが普通です。豚肉は部位により1ブロック何kg程度なのかが変わってきます。目安として、肩ロースは1ブロック2kgほどで仕入れられることが多いです。
良い豚肉を見極める眼
食肉にはさまざまな品種と部位があり、いい肉を見極めるにはそれなりの知識と経験が求められます。仕入れた肉の良し悪しを見極められれば、質の高い卸業者や生産者も見極めやすくなるでしょう。
素材を活かすトリミング技術
どんなにいい肉を仕入れても、トリミング(カット)の技術がなければ、せっかくのいい肉が台無しになってしまいます。肉の良し悪しを見抜く眼とともに、素材を無駄なく活かすためのトリミング技術も身につけておきましょう。
なお、トリミング済みの豚肉を仕入れる手もあります。本記事後半では、いい豚肉を扱っている業者、加工を施したうえで出荷してくれる業者を紹介しています。トリミングに自信がない、オペレーションをできるだけカットしたい場合は、このような業者を選ぶといいでしょう。
仕入先の種類や選び方
食肉はどこから仕入れられるのか、仕入先はどう選べばいいかといった知識も必要です。食肉の主な仕入先は「卸売業者」「食肉市場」「生産者」の3種類です。
最も手間がかからない仕入先は卸売業者ですが、必要な品種や部位を扱っていれば何でもいい、というわけでもありません。豚肉についての知識が豊富で適切な提案をしてくれる業者、情報を細かく教えてくれる業者は、お店にとっていいパートナーになってくれるでしょう。
豚肉の仕入れや扱いはどう学ぶ?状況・目的別の選択肢
豚肉の仕入れや扱いを学ぶ方法は、大きく3つに分けられます。それぞれの特徴やどんな人に向いているのかを紹介します。
自分のペースで学びたいなら「本やWebでの独学」
自分のペースで学びたい人や、すでにある程度の知識と経験がある人には、本やWebでの独学がおすすめです。自分にとって必要な情報を、自分のペースで学べるでしょう。
焼き肉店や精肉店で働いているなら、先輩やオーナーにおすすめの本を教えてもらうのもいいでしょう。
仕入先探しと並行するなら「食肉センター・生産者から学ぶ」
仕入先探しと平行して、食肉センターや生産者から学ぶ方法もあります。食肉センターの中には見学ができるところもあり、食肉の加工や仕入れの流れを、実際の現場を見ながら学べます。
たとえば東京の中央卸売場は「お肉の情報館」という、食肉の生産・解体作業、取引の流れや肉の部位などがわかる展示をしています。
食肉の良し悪しを学びたいなら、生産者の話を聞いてみるのもいいでしょう。生産者は食肉仕入れの最も川上にいる人で、それぞれこだわりを持って家畜を育てています。その生産者ならではのこだわりも聞くことで、お店に合った仕入先も見つかるかもしれません。
とにかく早く腕を上げたいなら「精肉店・焼肉店で働く」
とにかく早く腕を上げたいなら、精肉店や焼き肉店で働くのがいいでしょう。ベテランシェフの下で、実務を通して学ぶのが、生きた技術を身につける近道です。
自分の店を開くのが遅くなると思うかもしれませんが、独学には限界があります。知識や技術が足りていない状態でお店を開くよりも、きちんと学んだうえで独立する方が、成功確率も高いでしょう。
豚肉はどこから仕入れる?難易度別の3つの選択肢
豚肉の仕入先は「卸売業者」「食肉市場」「生産者」の3つに大別できます。これら3つの仕入先について、特徴や難易度を解説します。
Lv1.卸売業者から仕入れる
豚肉の仕入先として最もポピュラーであり、手間がかからないのは卸売業者でしょう。おすすめは通常の食材卸ではなく、豚肉(食肉)に特化した卸売業者から仕入れることです。このような業者はいい肉、さまざまな部位を扱っています。
食肉に関する知識が豊富、融通が利きやすいのも特徴です。お店に合ったブランドを提案してくれたり、要望に合わせて加工したうえで出荷してくれたりするでしょう。
Lv2.食肉市場で競り落とす
お店の立地にもよりますが、いい肉を仕入れたいなら食肉市場もおすすめです。飲食店のオーナーやバイヤーはもちろん、卸売業者も仕入れに来るほどです。
ただ、「市場まで行かなければならない」「売買参加者の資格が必要」といったデメリットもあります。売買は主に「せり」で行われるため、仕入価格も高くなるかもしれません。
Lv3.生産者からの直接仕入れ
仕入先を探したり確保したりするのは難しいですが、生産者からの直接仕入れにはさまざまなメリットがあります。
卸売業者の利益が乗っていない分仕入れコストを抑えやすく、生産者からの直接仕入れであること、その生産者のこだわりなどをマーケティングに活かすこともできます。
ただ、仕入れを安定させづらいため、いざというときの仕入先も確保しておきましょう。
飲食店におすすめの豚肉の仕入先7選
飲食店におすすめの豚肉の仕入先を7つ紹介します。どこも衛生・品質管理を徹底した会社で、提案力や対応力に優れています。扱う商品の種類や数、サービスの内容などを比較し、自社にピッタリの仕入先を見つけましょう。
日本ハム株式会社(食肉事業部)-トップクラスの食肉会社-
- 日本トップクラスの食肉会社
- 生産飼育から販売までを自社で一貫
- メニュー作りから参画し、多様な加工に対応
日本ハム株式会社は誰もが知る、日本トップクラスの食肉会社です。そんな日本ハムには食肉事業部もあり、飲食店や食品メーカーへの卸売も提供しています。
全国に拠点を持ち、生産飼育・処理・加工・物流・販売までを自社で一貫して行うことで、品質の高い豚肉をスピーディーに届けられるのが特徴です。
食材加工も提供しており、スライスや・ミンチなどの一次加工はもちろん、味付けやつくねのような二次加工も行っています。飲食店についてはメニュー作りから参画でき、プロのアドバイスを受けながらオペレーションと味を踏まえたメニューを作っていけます。
株式会社アダチヤ-お店のパートナーとしての提案力-
- 一人ひとりの顧客に合わせた提案力
- 豚肉・牛肉・鶏肉・その他の圧倒的な品揃え
- 一般消費者の目線に立った食へのこだわり
株式会社アダチヤは、お店のパートナーとしての圧倒的な提案力が魅力の総合食肉卸です。肉の種類はもちろん、予算や購入量などのさまざまな要望に応じた、一人ひとりの顧客に合わせたベストな提案をしてくれます。
豚肉や牛肉といったポピュラーな食肉はもちろん、ラムやマトン、鴨といった食肉まで幅広く扱っています。新規で仕入先を探しているお店はもちろん、既存の仕入先の提案や取り扱いの種類が少ないと感じている飲食店にもおすすめです。
店舗オーナーだけでなく、その先にいる一般消費者(お店のお客さん)の目線に立って、「安心」「安全」「美味しさ」にこだわり抜いています。
丸三食肉株式会社-ブランド豚の扱い多数-
- 生産者と協力し、さまざまなブランド豚を扱う
- テイクアウトメニューの作成をサポート
- LINEで仕入値チェック、発注ができる
丸三食肉株式会社は知多三元豚やみかわ秀麗豚といった国産ブランド豚はもちろん、スペイン産ガリシア栗豚やイタリア産ホエー豚などの海外ブランドまで、幅広く扱う食肉会社です。
さまざまな形態の食料品開発に携わってきた会社であり、そのノウハウを活かしたテイクアウトメニュー開発も提供しています。
LINEで仕入価格のチェックや発注ができるのも特徴で、豚肉仕入れにまつわるさまざまな業務を、スマホひとつでスピーディーに済ませられるでしょう。
川島食品株式会社-ミシュラン掲載店への卸売実績-
- イタリアン・フレンチで使う食肉に強い
- 一流レストランやホテルでの仕入実績多数
- 国内外のさまざまなブランド豚、部位を提供
川島食品株式会社は、ミシュランガイド掲載のレストランやホテルで使われている食肉会社です。「イタリアン・フレンチで使う食肉を任せるなら川島食品」と言われ、国内外のさまざまなブランド豚の、幅広い部位を扱っています。
豚肉はもちろん、牛肉や鶏肉、ジビエやラムなどさまざまな食肉を揃えています。生ハムやサラミといった加工品に強いのも特徴です。
配達エリアは東京都・神奈川県のみですが、エリア外からの注文にも、宅配便で対応しています。
株式会社ミートキムラ-多種多様な部位・内臓肉-
- 精肉から内臓肉まで、さまざまな部位を販売
- 国内外のさまざまなブランド豚を扱う
- 要望に応じた加工に対応
株式会社ミートキムラは精肉から内臓肉まで、さまざまな部位の豚肉を扱う食肉会社です。豚足や豚骨、皮付き豚なども含め、お店で必要な部位を選んで注文できます。
黒豚やイベリコ豚などの国内ブランド豚はもちろん、輸入ポークも各種扱っています。品種と部位の選択肢が広く、仕入にこだわり抜きたいお店におすすめです。
東京近郊の店舗には自社トラックを使い、仕入れ・加工から配送までを自社で一貫対応しています。明るく真心のこもった接客を心がけているのも特徴で、お店のパートナーとして、互いに気持ちよく仕事ができるでしょう。
株式会社ユタカ-OEM・セントラルキッチン代行アリ-
- セントラルキッチンでオペレーション工数カット
- ホテルやレストランのPB製造実績多数
- 熟練した職人がさばき、新鮮なまま素早く配送
株式会社ユタカは圧倒的な加工力と技術力が特徴の食肉会社です。食肉は熟練した職人が自社工場でさばき、新鮮なまま素早く配送します。ホテルやレストランのPB食品の製造実績も多く、創業以来、加工力を磨いてきた会社です。
PBやOEMの開発・製造、セントラルキッチン代行を提供しているのも特徴です。ホテルやチェーン店はもちろん、個人店でも依頼でき、小ロットにも対応しています。
テイクアウト商品や通販商品の開発、規模拡大にともなうオペレーション工数の削減など、お店の要望に応じたきめ細やかなサービスを提供しています。
株式会社シェフミートチグサ-こだわりの氷温熟成-
- 素材のうま味を引き出す氷温熟成
- 地元千葉県での「千産千消」をモットーに品質を追求
- 高品質のハム・ソーセージも販売
株式会社シェフミートチグサは昭和39年創業、千葉県にある食肉会社で、「千産千消(地産地消)」をモットーに品質を追求し続けてきました。
銘柄豚「チバザポーク」、豊かな飼育環境で育った豚肉だけを使った自社ブランドハム・ソーセージ「一」シリーズを扱っています。
0℃以下から食品が凍る直前の温度域「氷温」で熟成させることで素材の味を引き出した、精肉・加工肉が自慢です。
品種や部位、加工、提案力…。豚肉の仕入先はお店に合った会社を選ぼう
飲食店の仕入れの中でも、豚肉をはじめとする食肉は難しい食材です。肉の品質を見極める眼と素材を活かすトリミング技術が必要なのはもちろん、仕入先のサービス内容や提案力もチェックしなければなりません。
記事で紹介した食肉会社はどこも衛生管理・品質管理ともに徹底しており、提案力にも優れています。まずは気になる会社のHPをチェックしたり、疑問点や不安点を問い合わせたりしてみましょう。
その会社の担当者と実際に会話し、詳しい話を聞いてこそ、お店のパートナーとして信頼できる仕入先が見つかります。